不要品のリユース事業を手掛ける五右衛門ホールディングス(神奈川県藤沢市)は、ガーナのスラム街の人々をアートで支援する美術家長坂真護氏の活動を支援している!
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  • ✎IRIEP事務局
  • 2022/05/10

五右衛門ホールディングスは、藤沢市に本店を構える不要品のリユース・リサイクル&コンサルティング、ギャラリー運営などを手掛け、リユースで社会に新しい価値の提供を目指しているサステナブル企業である。創業者は、同社代表取締役・CEOの坂根大郷氏だ。

2022年3月1日、読売新聞朝刊の地域欄「けいざい人」に“すべて買取りリユースへ”の見出しで坂根大郷氏の紹介記事が掲載された。一見、中古品を商材とした新興のリユース会社と思ったが、坂根氏の経歴を読むとそうではない、何か惹かれるものがあった。坂根社長のリユース事業は、大手リユース企業が行っているリユースショップの展開とは違い、消費者に近い感じである。それは、使わなくなったモノが家の中に退蔵され、循環が滞っているモノを再び使われるようにする、これまでとは違う何か新しいものを予感させるものだった。

そこで、一度お会いすることができないかと願いを込めて、横浜元町にあるアートギャラリー「MAGO GALLERY YOKOHAMA」(横浜元町ギャラリー)へ足を運んだ。分かっていたことではあるが坂根氏は社長なので常駐はされておらず、お会いすることはできなかった。だが幸運にもギャラリースタッフの東村奈保さん(クリエイティブプロデューサー)と長坂真護氏のアート作品を通じて、リユース・リサイクルの話をすることができた。

長坂真護氏にはもちろん興味もあるのだが、リユース事業とアート事業を手掛ける坂根社長にさらに興味が湧いてきた。そこで勇気を出して名刺を差し出したところ、坂根社長へお伝えすると言っていただいた。そのご厚意が実って坂根社長との面談が実現する運びとなった。

面談の当日はあいにくの雨天となったものの予定時間を大幅に超えた意見交換を行うことができた。坂根氏の出身は京都で親の影響は大きく、小さいころからスキー、自転車、陸上などスポーツに勤しみ、大学ではオリンピック選手を排出しているスキー競技部のマネージャーを任されたとのことだ。その中で、五右衛門ホールディングス創業につながるマーケティング、社会経験を積み上げられた。失敗も数多くしたというがその経験をすべて生かして成し遂げた今の姿は、以前、名古屋大学の天野浩教授(2014年ノーベル物理学賞受賞)から伺った青色発光ダイオードの発明と重なるところがあった。失敗を続けることのできる芯の強さこそ、新しい価値の源だと思う。しかし、誰にでも備わっているものではない。

リユースの話題の中で、不要品の掘り起こしについて、坂根氏は新しい遺品整理のあり方を考えているとのことだった。日本中で空き家が増えていく中で、所有者が求めるサービスとは何か。所有者と事業者の接点に新しい価値、付加価値を作り出す経営者の視点をそこに感じた。一方、事業を進めて行くうえでは事業者との協調、アライアンスの必要性について考えているとのことだった。日本のリユース産業は、消費者と企業・団体が発展させてきたが、いま新しい価値が生み出され、サーキュラー・エコノミーがスタンダードへと変わりはじめている。

話題を「MAGO GALLERY YOKOHAMA」に展示されている長坂真護氏のアート作品に移し、どういったきっかけでアートギャラリーの運営にいたったのかをうかがった。

❖坂根氏:「付加価値」をどうやって作り出すか、生み出すかを考えていたときに長坂真護のアートに出会った。E-Wasteで作ったアートを相場検索サイトで調べても出てこない。アートを大手百貨店で展示会を開くと高い値段でも売れていく。これはすごいことだと思った。活動に共感したのはもちろんのこと彼を支援することを目的にはじめた。

展示されている長坂真護氏のアート作品は購入することができる。このアートの価値は何なのか。なぜ買う人がいるのか。そこには、人間が普遍的に持つ美への感性と善への行動があるのではないかと思われた。

パークホテル東京で展示されたときの作品

長坂真護氏は、ガーナのスラム街アグボグブロシーにひとりで行き、先進国の企業で作られた製品の廃棄物「E-Waste」の捨て場とプラスチックリバー(長坂氏命名)を見て、全身で感じ、感染症で命の危機に直面しながらもそこで働く人たちとの出会いや交流を通じて信頼関係を築いていった。そして、自分の持つ美術家としての最大の能力を生かし、さらなる行動を次々と起こしていった。その行動は、国を越え、多くの人に支持されていった。彼が語る「行動こそ真実」は、彼の著書である、『Still A“BLACK”StAR』冒険記Ⅰ、冒険記Ⅱ、冒険記Ⅲに記されている。推敲など無用のドキュメンタリーな筆記だから情景がリアルに感じられるドラマだ。

冒険記Ⅰ(全100頁)、冒険記Ⅱ(全176頁)、冒険記Ⅲ(全236頁)

彼が目指しているのは、スラム街の人々の貧困の解決、環境の保全、そして世界平和だ。ガーナの国旗の中心の黒い★を輝く星にすること。その為に、ガーナにリサイクル工場を作ることが目標だ。しかし、これは簡単なことではない。だが、彼にはいくつもの困難を乗り越えてきたアートの力があり、解決してきた行動力がある。五右衛門ホールディングスの坂根大郷氏のような支える仲間がいる。日本でリユースによる新しい価値提供が社会に生み出されていくように、SDGsのゴールへ向かう新しい価値の創出と行動はアートから生まれている。

パークホテル東京で開催された「長坂真護 展」

長坂真護氏のアート作品(絵画)と著書は「MAGO GALLERY YOKOHAMA」で購入することができる。長坂氏の作品はもちろん、アグボグブロシーの長坂氏の弟子である小さな美術家の作品も販売されている。売り上げは、ガーナの支援に役立てられ、冒険記にいたっては全額が対象となっている。冒険記は、一般の書籍より高いが値段以上に得られるものがあった。横浜元町ギャラリーでは、冒険記とTシャツの見本が置いてあるので手に取って確かめることができる。Tシャツはサステナブルを考え、作り置きをしない。そのためオンラインのみでの購入だ。冒険記を含む著書はその場で購入できる。もし売り切れていた場合でも、取り寄せもしくはオンラインで購入できる。是非「MAGO GALLERY YOKOHAMA」に足を運んでみて欲しい。

MAGO GALLERY YOKOHAMA ディレクター 東村さん

❖ MAGO GALLERY YOKOHAMA
 神奈川県横浜市中区元町1丁目38-2 Le Noir 横濱元町 1F
 定休日:不定休
  ☞ Webトップの営業カレンダーをチェック!

❖ 長坂真護氏
 MAGO CREATION(株)代表取締役兼美術家
 MAGO Art & Study Institute Founder
  ☞ ガーナにリサイクル工場を建設することを目指している

『Still A“BLACK”StAR』に込められた想い
 それは、ガーナの国旗の意味から来ている。
 上段の赤色は、植民地から独立によって流された血の色、黄色は豊富な資源、緑色は、豊かな大地を表している。そして、真ん中の黒い★は【まだ、この星は輝いていない】という意味である。
  Still A“BLACK”StAR、まだ、黒い星

 ★黒い星はアフリカの自由を導く道しるべの星
 引用:外務省Webサイト Ministry of Foreign Affairs of Japan

後記:長坂真護氏の支援活動は、アフガニスタンで医療・人道支援をされた医師中村哲氏と重なる。長坂氏の活動が安全に行われように日本国政府の関心を高め、ガーナ共和国政府、在ガーナ日本国大使館との協同を願うばかりだ。