日本リユース・リサイクル回収事業者組合(JRRC)は、地域に根付いた回収業者の有効活用を図る唯一の業界団体である。すなわち、小型家電リサイクル法の附帯決議を民間によって実践しているのはJRRCだけと言える!
  • SDGs
  • 資源循環
  • ✎IRIEP事務局
  • 2022/05/31


2022年5月27日金曜日、テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」に一般社団法人日本リユース・リサイクル回収事業者組合(JRRC)のメンバーが登場した。片付け作業を行っている場面が紹介されたのだ。

JRRCメンバー加藤敬太 氏 [ 引用 テレビ東京 ガイアの夜明け ]

JRRCは、2013年に不要品回収事業者の有志が集って設立された団体である。2022年3月31日現在の会員数は478(法人159、個人事業主319)で業界最大規模である。JRRCが設立されたのはいまから10年ほど前、家庭からいらなくなったものを引き取ったり、買い取っていた事業者は事業継続の岐路にたたされていた。

2011年5月、環境省は不用品回収業者の実態に関する調査を、全市区町村を対象に実施し、その調査結果を公表した。不用品回収業者の中には「無料回収」と称して、高額な料金請求をする悪質な事業者もいる。消費者との間でトラブルが増加している。集めた物品を不法投棄した疑いで業者が逮捕される事案も発生など、様々な問題事象に対して国民へ注意喚起を行った。

これに困惑したのが適正に不要品のリユース・リサイクルを行う不要品回収事業者たちだ。違法なことをしている事業者と一緒にされることは事業継続を難しくするばかりでなく、資源循環の逆行となると危機感を抱いた。そこで、中古品輸出最大手の㈱浜屋(東松山市)、元国会議員等の協力を得ながら何度も会合を開き協議を行った。そして、2013年12月に設立発会式、同日一般社団法人日本リユース・リサイクル回収事業者組合が設立された。初代代表理事はNPO法人家電リユース協議会元代表理事の岩瀨勝一氏。翌2015年4月には第1回総会が盛大に開催された。


2014年第一回JRRC総会開催

法令遵守を前面に掲げた発表の様子
副代表理事 小林一平 氏(2014年4月当時)
❖2022年5月31日現在代表理事

設立後、掲げた法令遵守を形にするべく『リユース及びリサイクル品の回収に関するガイドライン』を約1年かけて作成し、2015年に初版を発行した。作成には関係省庁との意見交換、他団体との面談も実施した。特に重要な消費者との取り引き、契約を明確にするための『見積・売買契約書兼古物台帳』を作成し、消費者に不利益とならないためのしくみを構築した。これこそ、悪質な事業者との差別化を明確に図り消費者との信頼関係を築くJRRCの最初のツールである。

リユース及びリサイクル品の回収に関するガイドライン(第2版 2021年4月発行)
見積・売買契約書兼古物台帳

法令遵守、それを事業者へ浸透させることは大変であるが大いなる意義がある。ガイドラインは法令を遵守することを前面に出し、啓蒙を図っていくことを霞が関の役人へ何度も話して作り上げた。そして、刷り上がったガイドラインを全会員へ配布し、毎年法令遵守のセミナーを全国各地で行い啓蒙に力を入れている。2021年には事業に関係する重要な法律を目的と要点にまとめ一覧表にし、さらに「フロン排出抑制法」「古物営業法」等の改正内容も加えた第2版を発行した。

全国セミナーの様子(2016年 茨城県笠間市)
全国セミナーの様子(2016年 広島県東広島市)

次に取り組んだのが生前整理・遺品整理における適法、適正な作業遂行の構築である。2017年JRRCは、他団体が展開している遺品整理に関する民間資格の法令遵守をより強化させた『遺品3Rディレクター』資格制度を立ち上げた。法律は民法から消費者契約法、特定商取引法、古物営業法、廃棄物処理法、家電リサイクル法、小型家電リサイクル法、個人情報保護法などを中心にⅠ基礎編、Ⅱ実務編、Ⅲ法令の基礎と遵守の3部構成となっている。

『遺品3Rディレクター』資格講座テキストと法令・通知を収録したテキスト別冊
テキスト・テキスト別冊の充実した内容

さらに消費者との取り引きには欠かせない帳票類(書面)を受付から現地調査、契約、約款、作業、完了に至るまで10種類超を用意した。手間はかかるがこの面倒な手続きを確実に行うことで消費者、行政、そして社会からの信頼を得る。JRRCの資格制度の神髄といっていい。

充実した帳票類

資格講座の講師を務めるのは代表理事の小林一平氏、副代表理事の岩瀨勝一氏、事務局長の岩楯学氏だ。現在は岩楯学氏をメインに実施している。岩楯氏は、講師としては経験豊富な高いスキルとキャリアの持ち主である。

2022年4月中旬 浦和市内で開催された資格講座の様子

講師を務める岩楯学 氏

とりわけ説得力のあるのは、遺品整理・片付け等の現場経験を踏まえ、戸建て、集合住宅、分譲マンションなどの現場で発生する事象を分析、ノウハウを体系化して、準備から仕分け・選別作業から不要物の適正な処分にまで至るまで、ほとんど網羅した説明を実施していることだ。極めつけは行政でさえ困る危険物・処理困難物について、事例を挙げて丁寧に説明する力の入れようである。事業者が現場で困惑しないのはもちろんのこと、不適正な処理を防止するのが目的である。出し惜しみを一切しないのは徹底した法令遵守と適正な対応の現れである。地域行政も驚くほどの内容に本講座の価値を見た。

Ⅱ実務編 講義の様子
Ⅲ法令の基礎と遵守 講義の様子
廃棄物の取り扱いを重視した内容

JRRCは今年で設立10年目を迎える。不要品回収事業者を悪質な事業者と一緒にされないために立上げた団体は「ガイアの夜明け」に出演するところまできた。だが、手に手を取って喜ぶのはまだ早い。そう語るのは現在副代表理事の岩瀨勝一氏73歳。
「全国ネットで放送されたのは地域に根付いた不要品回収事業者の有効活用の証と言える。しかし、まだまだ知名度は低い。資源循環、地域循環共生圏など環境保全と同時に雇用を守り、豊かな生活環境を維持するための取り組みはこれからが本番である。」

副代表理事 岩瀨勝一 氏

少子高齢化が進み続ける日本社会。同時に増え続ける空き家問題など社会課題に対して、JRRCは大手リユース企業と連携し、課題解決に取り組み始めた。消費者の求める片付け要望に法令遵守を中心に据え、少しずつ確実に信頼の根を張り巡らせている。消費者に適切なサービス提供、行政との信頼関係構築。事業者の方は「遺品3Rディレクター」資格を取得し、社会課題の解決に事業として取り組んでみてはどうだろうか。講義を傍聴し、本当にそう感じた。


充実した資格講座テキストと資料
講師 岩楯学 氏
2022年4月中旬 埼玉県内で開催された資格講座の様子