「循環経済ビジョン2020」の消費者の行動を啓発するための地域情報誌「不要品をごみにしない方法 横浜市版」を2023年12月1日に発行しました。
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  • ✎IRIEP事務局
  • 2024/01/11

構想から5年、延べ2年の制作期間を経て、不要品をごみにしないための地域情報誌を制作しました。第1号は横浜市。発行は2023年12月1日です。

横浜市版 2023年12月1日発行

私たちはこれまでに2つの制作物を手がけました。ひとつは、リユース・リサイクル品を回収するための業界初の自主ガイドライン。もう一つは、片付け・遺品整理を業として行う事業者を対象とした民間資格用の遺品整理テキストです。


今回は消費者を対象とした、いらなくなったものをごみにしない方法を紹介した冊子です。紙面の都合上、主なものを掲載しました。地域情報誌としたのはエリアを地方自治体単位で、特に区市町村単位がもっとも取り組みやすいと考えたからです。地域の住民が主体となって、地域に根付いた事業者と行政が一体となり循環社会を形成し、同時に循環経済(サーキュラーエコノミー)へ移行させていくことが最も自然にできるのではないかと考えました。循環社会、循環経済のファクターは地域の住民、つまり消費者自身が持続可能なライフスタイルにしていくこと、習慣を変えていくための循環行動の手引きが必要と考えました。

私たち消費者は家庭でいらなくなったものを処分するとき多くの場合、行政のルールに従ってごみとして捨てています。横浜市は「ごみと資源物の分け方・出し方」冊子を制作し、市民に対してごみの適正な出し方と分別を周知しています。ごみの収集は、生活環境を清潔に保つための重要な行政サービスです。ごみの分別を間違ったり、危険物や発火の原因となる物を燃えるごみと一緒に出してしまうと職員がけがをしたり、場合によってはごみ収集車やごみ焼却場の火災につながってしまいます。火災などでごみの収集が一日でも滞ると街はごみで溢れかえってしまいますし、復旧には多くの税金がかかってしまうことになります。

一方でごみを出すこと、収集することは日常となり、なくてはならないものとなりました。まだ使えるけどいらないし、邪魔だからとごみとして出すことが一般的になりました。ごみの中に利用できるものがあっても焼却や埋め立てされることが当たり前になってしまったのです。

日本は1955年から高度経済成長に入り、大量生産、大量消費、大量廃棄の経済システムとなりました。その結果、産業公害を発生させてしまいその代償は、人間をはじめとしてあらゆる動植物と生態系に甚大な被害を及ぼしました。2000年代に入り国は、最終処分場のひっ迫から3R(Reduceリデュース・Reuseリユース・Recycleリサイクル)政策を打ち出し、家庭から出るごみをリサイクル(再生利用)するためのリサイクル法をいくつも成立させ、ごみの削減に取り組みはじめました。「資源ごみ」はその象徴と言えます。

家庭から出されるごみ(一般廃棄物)は年々減ってきてはいますが、まだ資源として価値のある多くのモノが焼却され、あるいは埋め立てがされていると思われます。小型家電リサイクル法に指定されている28品目の徹底したリユースとリサイクルが必要です。

日本のごみ排出量 ☞ 日本のごみ排出量は年々減ってきてはいるが・・・

国は2020年に『循環経済ビジョン2020』を発表しました。その中の循環経済への転換に向けた対応の方向性①では、消費者を循環経済システムの構成員として2つの行動を掲げています。

消費者:循環経済システムの構成員としての行動

• 環境負荷の低い製品の率先購入

• 廃棄物等の排出の極小化など消費行動・ライフスタイルの転換

出典:経済産業省「循環経済ビジョン2020(概要)」2020年5月

私たちが制作した不要品をごみにしないための地域情報誌は、循環経済ビジョン2020の方向性を形にしたものとなりました。消費者の行動を自然な形で無理をしないで変えるには、習慣を変える新しい手引きを浸透させていくことが必要です。地域情報誌横浜市版「不要品をごみとして出す前に リユース・リサイクルの仕方」は、リユースを最初にして8つの章で構成しました。

1. リユース(再使用)する
2. 修理・修繕・補修する
3. リサイクルする
4. 片付けを依頼する
5. 空き家の管理と活用
6. サステナブル・資源循環社会の主なキーワード
7. 地域のお店・事業者・業界団体・国が定める指定法人
8. 法律の豆知識 〜環境と消費に関する主な法律〜

不要品をごみにしない地域情報誌の3つの狙い

• 日常になっている「ごみ」を出すという習慣を見直すきっかけづくり

• 地域に根付いた事業者(リユース・リサイクル)と消費者の橋渡し

• 資源とモノの循環を生活に根付かせることで循環生活、循環行政、そして循環産業につなげる

本文中、説明や紹介等で掲載している事業者や地域の事業者、業界団体への同意、古紙やプラスチック等のリサイクルについて詳説しているところは業界団体へ確認するなどを行いました。また、資源集団回収やごみの収集等に関するところは横浜市資源循環局業務課、資源循環局戸塚事務所、空き家に関するところは横浜市の担当部署へ確認を行いました。著作権等の法令に関しては弁護士によるリーガルチェックを行いました。これまでのごみ出しの習慣からごみにしない習慣に変えていくには、地域に根付いたリユース・リサイクル事業者と消費者、それに行政のつながりが不可欠です。

世界規模の環境問題は気候変動、海洋プラスチックごみ、土壌汚染、大気汚染など解決が難しいものばかりです。しかし、事の発端はすべて人間が作り出し、使って、捨てるごみ(=廃棄物)です。あらゆる環境問題の原因は人間が排出する廃棄物にあるといっても過言ではありません。消費者が廃棄物の処理等について規制する法律を含めて資源循環の重要性を理解し、どうすればいいのかと行動を意識することによって、生産者や生産者を規制する国や地方自治体の変革につながるのではないかと考えています。

サーキュラーエコノミーから見た持続可能なライフスタイルのヒント

地域情報誌横浜市版の概要
「不要品をごみとして出す前に リユース・リサイクルの仕方」

1.リユース(再使用)する
リユースは長く使うことです。人にあげたり寄付したり、売ったりするなど方法はいくつもあります。そのまま使う、修理・修繕して使うことで資源消費をおさえたり、環境への負荷を減らすことにつながります。地域のリユース・リサイクルショップ、不要品を適正に回収している事業者、福祉団体などへ持っていく、取りに来てもらうなどの方法があります。


2.修理・修繕・補修する
修理・修繕・補修はモノを長く使うことで基本となることです。家電製品を1回の故障で買い替えるのはもったいない。安くない修理もあるけれど、まずは修理ができないか考えてみると違った世界が見えてきます。日本の製品は品質が高いから修理するとまだまだ使えます。


3.リサイクルする
リサイクルは、家庭でできる生ごみのたい肥化や生活用品を資源としてリサイクルにつなげるための手段を掲載しました。特に循環させるべき資源として家電製品やパソコンに含まれる希少金属を含めた金属類のリサイクル、古紙・古布の回収については、区市町村の資源集団回収制度の取り組みをフォローする内容も入れています。プラスチックは、容器包装リサイクル法とプラスチックリサイクル法に準じた回収とプラスチックの自然界への流出について掲載しました。


4.片付けを依頼する
片付けは、遺品整理を含めた業者へ依頼するときの注意点と横浜市が収集しないごみについて、横浜市が発行している冊子「ごみと資源物の分け方・出し方」の内容を表形式にして掲載しています。また、遺された故人のデジタル画像や各種アカウント、情報等についても掲載しました。


5.空き家の管理と活用
本章は、遺品整理等を行ったあとに住むことがなくなった住宅について、横浜市の取り組みや支援制度を取り上げています。また、空き家を地域のコミュニティや防災拠点としてリノベーションに取り組む事業者を取り上げています。

6.サステナブル・資源循環社会の主なキーワード
数ある環境用語、環境問題の解決の取り組みの中から、サステナブル・資源循環社会のキーワードとして、SDGs、サーキュラーエコノミー(循環経済)、カーボンニュートラル、ゼロ・ウェイストなど主なものを取り上げています。


7.地域のお店・事業者・業界団体・国が定める指定法人
消費者のごみにしないための行動を支えるのは地域に根付いたリユース、リペア、リサイクル等を行う事業者です。適法・適正に事業を行う地域の事業者を紹介することで資源循環につなげていきます。

8.法律の豆知識 〜環境と消費に関する主な法律〜
日本の循環型社会を形成するための法律や消費に関する法律の中から消費者が知っておくべき法律を掲載しています。法律や制度を理解することによって、適法・適正な資源循環の推進と循環社会への関心を深められたらと思っています。また、消費者がごみにしない行動を取ったことで収入となった場合の対応についても掲載しました。

編集コラム
あとがきとして、持続可能なライフスタイルにつなげる消費者が取り得る行動を取り上げました。人間が文明の利器を使って生活をすると「ごみ」が出てきます。これまでは作って、使って、捨てる。そして、捨てたものからリサイクルすることに取り組んできました。これからは、ごみにしないようにする行動とごみにならないようにするモノづくりが大事になると思います。

本誌は、横浜市が制作したものではありません。内容について、横浜市へ問い合わせをしないようにご注意ください。